言語文化教育研究学会:Association for Language and Cultural Education

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2023年度 特別企画

【11月11日】多文化の街・大久保ツアー ― 歴史的変遷と言語景観をたどる旅

講師:善元幸夫さん(日韓合同授業研究会・目白大学非常勤講師)

大久保地域は、2018年の統計では約4人に1人が外国籍という多文化の街です(申,2019)。現在もコリアン料理、化粧品や芸能関係の店が多く軒を連ねていますが、他にも中国、ネパール、ムスリム系など、多様な地域の店が混在しており、韓国通り、イスラム通り、中国通り、アジアの通りなど棲み分けが進んでいます(善元,2022)。このように多様な出身地や言語、生活習慣などを共有する人々のコミュニティが共存する大久保という空間はどのような歴史的変遷を遂げ、現在どのような空間であるのでしょうか。

本企画では、「歴史」と「言語景観」という2つのアプローチから街を体感・体験するということを行います。「歴史」という観点では、街歩きの案内人・講師として、2007年より大久保の町に関わってこられた元大久保小学校教諭の善元幸夫氏を招聘し、街の変遷、現在の街の様子について歩きながらお話しいただきます。

また、「言語景観」という観点では、参加者の方に町を歩きながら、言語景観で気付きのあったものを写真に撮ったり、音声を録音するなどをしていただき、ツアー終了後、撮影、録音したものをpadletに投稿して共有し、個々で振り返りをしていただきます。

ツアーの訪問地は、大久保小学校(外観のみ)、コリアタウン(韓国系)、皆中稲荷神社、イスラム通り(西アジア、ミャンマー、ネパール、バングラデシュなど)、国際通り(タイ、ベトナム、中国、台湾)です。終了後には懇親会も予定しています。

なお、参加の際の保険に関しましては、参加者ご自身でご対応いただけますようお願い申し上げます。

参考文献
  • 申恵媛(2019).「開かれた」地域社会の重層性 ― エスニックな観光地化する「新大久保」の事例から『アメリカ太平洋研究』19,37-48.
  • 善元幸夫(2022).反差別・命・人権 ― 多文化共生はどこまで可能か『最終部落解放』87(未刊行).

【11月5日】チェンジラボラトリーによる拡張的学習への形成的介入の研究 ― 活動理論のすすめ

講師:山住勝広氏(関西大学)

  • 企画:大平幸、佐野香織、嶋津百代、八木真奈美

今回の特別企画では、活動理論の第一人者である山住勝広氏に「チェンジラボラトリーによる拡張的学習」についてご講演いただきます。また、研究者や教育実践者が研究・教育の枠組みにとどまらず、社会を変えていくためにどのようなことができるのか、参加者のみなさまとともに検討を行いたいと思います。

趣旨

「文化・歴史的活動理論」は、人間の「活動システム」の集団的な創造に関する体系的な理論である。この活動理論にもとづき、ユーリア・エンゲストロームが提唱し、いまや国際的な研究運動を巻き起こしているのが、「拡張的学習理論」である。活動理論は、人間が、文化・歴史的な社会的実践の中で、与えられたものを超え、解放をめざして、「まだないもの」を創造していくような拡張的学習を自分たちで生み出していくことに焦点を合わせ、それをリアルに研究する方法論を構築して、多数多様な具体的研究を実行してきた。そこでは、活動の担い手たち自身が周りの世界を変え、そのことを通して同時に自分たち自身を変えていくような「変革的エージェンシー」を拡張することへの介入が、「形成的介入」と呼ばれ、研究の中軸に据えられてきた。

本講演では、そうした形成的介入の具体的な方法として、実践者と研究者が協働で実践の創造と変革に実験的に取り組む「チェンジラボラトリー」について、私たちの科研費研究グループが小学校現場で現在進めている実施例を紹介しながら解説したい。(山住勝広)

  • 2022~2026年度科研費(基盤研究(A):22H00084)「拡張する学校を創る――変革的エージェンシーの形成へ」